睡眠不足が蓄積され、命を危険にさらす疾患への因子となる「睡眠負債」。
日本人の約4割が6時間未満という短い睡眠時間で生活をしており、その予備軍は40~50代の女性にも数多く存在します。
できるならば「睡眠負債」を抱える前に早く返済したいですよね。
今回は「睡眠負債」が体へ与える影響や熟睡するための睡眠方法を紹介します。
気づかないうちに溜まっている「睡眠負債」とは
あなたは、原因がわからない疲労感や倦怠感、無気力などの症状を感じたことはありませんか?
心当たりのある人は、もしかしたら「睡眠負債」を抱えているかもしれません。
睡眠負債は、積み重なった睡眠不足が元になって引き起こされます。
人によっては、短い睡眠時間でも問題を感じていないという方もいらっしゃいます。
しかし、6時間以下の睡眠を2週間続けると、脳の働きが低下するという研究報告があり、さらに、がんや認知症など重篤な疾患を引き起こすリスクもあることが判明しています。
そんな中、日本では、約4割の人が6時間未満の睡眠で生活しているという状況。
短い睡眠が日常になっているため、自分では「睡眠負債」に気づきにくい人が多いのです。
「睡眠負債」が体にもたらす3つの影響
脳の機能低下が考えられる
2005年にペンシルべニア大学で、徹夜と6時間睡眠のグループに分け、注意力や集中力の変化を検証する実験が行われました。
徹夜のグループは、2日目で急激な脳機能の低下が見られ、眠気への自覚症状もありました。
一方、6時間睡眠のグループは、注意力や集中力が徐々に落ち、2週間目に徹夜グループの2晩目と同程度まで減退してしまったのです。
また、6時間睡眠グループは、眠気への自覚症状がない場合もありました。
このように、人は気づかないうちに睡眠負債を蓄積してしまう傾向があります。
がんや認知症のリスクの上昇
東北大学で宮城県の24,000人の女性を対象に、7年間乳がんの発症率を追跡した研究があります。
7時間睡眠の対象者に比べ、6時間睡眠の方が1.6倍も乳がん発症リスクがあったのです。
また、2014年にシカゴ大学で行われた実験では、睡眠負債を持つマウスはがん細胞が増殖しやすいこともわかりました。
さらに、アルツハイマー病の原因ともいわれる「アミロイドβ」は、本来睡眠によって取り除かれます。
しかし、睡眠負債が原因で「アミロイドβ」が蓄積し、認知症へとつながってしまうのです。
肥満になりやすい
睡眠不足が続くと体のホルモンバランスは崩れてしまいます。
睡眠不足により食欲を増進させる「グレリン」増えることで、抑制ホルモンであるレプチンの作用を阻害。
また、糖質や脂質の代謝を促す成長ホルモンは睡眠によって分泌されるので、良い睡眠が取れていないと痩せにくい体になってしまいます。
「睡眠負債」を抱えているか確認するには?
自分が睡眠負債に陥っていないか気になってきますよね。
実は、睡眠負債を抱えているかを確認する方法は思ったより簡単。
ここでは、休日と平日の睡眠時間を比較する方法を紹介します。
睡眠負債の確認方法
(1)翌日が休みの時、朝になっても光が入らないよう寝室を暗くします。
(2)時間も見られないように環境を整えて眠りにつきます。
(3)そのまま眠気がなくなるまでぐっすり眠るのですが、もしも目が覚めた時にまだ眠ければ二度寝をします。
そうして目が覚めた時間が、平日よりも2時間以上長い場合は、睡眠負債を抱えていると判断してよいでしょう。
このように平日よりも睡眠時間が長い状況は、体が睡眠負債を返済するために「寝だめ」をしている証拠。
ただ、あまりに長く寝すぎると、体内時計のリズムが崩れてしまいます。
そのため、長時間の「寝だめ」で睡眠負債を返すのはおすすめではありません。
熟睡し良質な睡眠を取る3つの方法
睡眠負債を抱えていることがわかっても、それを改善する方法はあるのでご安心ください。
日常に取り入れやすく、少し意識すればよいものばかりです。
睡眠を促す生活スタイルへの見直し
食生活で行える工夫は、鶏肉や卵、大豆製品など高タンパクのものを食べることです。
タンパク質には脳をリラックスさせ、睡眠を促すホルモン「セロトニン」を作れる栄養素が多く含まれています。
さらに、朝に食べることで、夕方にはセロトニンが分泌されやすい状況を作り出すこともできるのです。
他にも、夕食を就寝の3~4時間前にすませておくと、胃への負担が減り、快眠しやすくなります。
また、眠る前にヨガなど、副交感神経の働きを優位にする運動は良いとされています。
長く深い呼吸方法は睡眠の質を上げる効果がありますよ。
光とのかかわり方を考えてみる
良い睡眠を促すためには、太陽の光を浴びることが重要です。
人間には、体内時計という約25時間周期で1日のリズムを刻む機能があります。
光を浴びることでリセットされ動き出し、睡眠ホルモンであるセロトニンの分泌を止めます。
そして、14~16時間が経過すると、セロトニンの分泌が始まり、睡眠モードに変化するのです。
このサイクルが崩れると、夜眠れなくなったり、日中眠気で集中できなかったりという問題を生み出します。
そのため、一定時間に起きて太陽の光を浴びることが、遅れがちな体内時計を正常に戻す1つの方法なのです。
また、スマートフォンなどのブルーライトの光でも、セロトニンの分泌を阻害され、体内時計を狂わせる原因になるので注意が必要です。
昼寝(仮眠)をおこなう
昼寝を活用するのも、睡眠負債には有効です。
平日の昼に20分ほどの仮眠をとることをパワー・ナップといい、NASAでも取り入れられている制度です。
この短時間の睡眠で、睡眠負債を返済することもでき、脳の活性化も促します。
おかげで、午後からの作業の能率も上がり、早く仕事を終え、睡眠時間を確保できるという一石二鳥の方法なのです。
ただし、昼寝をしすぎると夜寝つきが悪くなることがあるので、時間に気をつけなくてはなりません。
まとめ
自分ではなかなか気づきにくいからこそ、対処に困る睡眠負債。
しかし、早めに見つけることができれば、その負債を軽くすることは可能です。
今回ご紹介した方法で、最初は自分自身に睡眠負債が蓄積されているかどうか確認しましょう。
もし、睡眠負債を抱えていることが分かったら、熟睡を促す方法の中でも、特に睡眠ホルモン「セロトニン」との付き合い方を見直してみるのをおすすめします。
そして、食生活や光とのかかわり方など、少し意識するだけでできる改善策を実施してみてください。
まずは、睡眠負債を返済していくための最初の一歩を踏み出しましょう。